変われるってムテキインタビュー vol.8 前田孝行

変われるってムテキインタビュー vol.8 前田孝行

「変われるってムテキ」を世界中に。
それが、私たちスピンズのVISIONです。

世の中に服屋さんは星の数ほどあれど
私たちスピンズは「変われるってムテキ」を伝えたい服屋さん。
自らが変わっていくことで、自分の人生をクリエイトし
ワクワクを世界に伝えていく。

このインタビューは、そんな私たちの「変われるってムテキ」物語です。

 

今回のインタビューはSUPER SPINNS福岡PARCO店店長サブであり福岡六本松にあるAMS SHOPの店長をされている前田孝行さんにお話をお聞き致しました。

「何かになりたい」といった夢もなかった幼少期

ー 前田さんのこれまでのお話をお聞かせください。

前田:僕は小さい頃からずっと「何かになりたい」といった夢もなく育ちました。
そんな僕が唯一夢中になれたのが野球でした。でも膝がぴょんぴょんとなってしまうような、とてつもない運動音痴だったので野球部に所属はしていたのですが、チームの盛り上げ役というか元気なことをする子といった立場でした。僕にはそれしか選ぶことができなかったんですけれど。
野球でこの先を進んでいくのは無理だと考えていた高校一年生の時、小学校の頃からの親友が「これ見てみろ」と雑誌を見せてくれました。そこで出会ったのがファッションでした。

前田:生まれ育った宮崎県の都城は子供とおじさんしかいないような田舎町でした。
オシャレだなという人もいなかったですし、そもそも僕自身にもファッションに対する感覚すらありませんでした。
一般の人達から見たら「この人たちなんなんだろう」と思われるようなスタイルを本気でやっている人たちを見てファッションも含めて格好いいと思いファッションに目覚めました。

後ろ指刺されるような人達が全力で表現する世界

前田:当時は言葉にできなかったと思うのですが、今振り返ると地元にいたら陰口を叩かれるような格好をしている人たちが好きなことを全力で表現しているという事と、運動音痴で野球が出来なかった自分を重ね合わせて強く惹かれていったのだと思います。
その事がきっかけで高校卒業後ファッションの専門学校に行ったというのが僕にとって最初のガラっと変わった出来事です。
もしファッションに出会っていなかったらどこかに就職したか実家の自転車屋を継いでいたと思います。

ファッションを通して人が繋がる体験から「こういう事がしたいんだ」

ー ファッションに出会い福岡の専門学校へ入学した前田さん。どんな事があったのでしょう。

前田:福岡の専門学校に入った当時はドメスティックブランドのお店に通いつめて新品ばかり着ていました。学校が終わったらお店に通い詰めて暇さえあれば話をしに行くような学生です。
お店の人からしたら「こいつ何やねん」って感じだったと思いますけど、スタッフさんと仲良くなってよく遊びに連れていってもらったりしました。
地元にいた頃は雑誌の中にあるファッションの世界を眺めていただけでした。しかし福岡に行って実際にファッションの世界で生きている人達と出会うとファッションの持つ強いエネルギーを感じました。そんな中で仲の良いスタッフさんに「古着も着た方がいいよ」と言われ古着屋を巡るようになります。
古着屋に通い詰めていると、お店の人から「同い年だったらどこどこの専門学校に行ってる彼と話すと面白いよ」と色々な人を紹介してもらい、今でも繋がっている仲間達と出会うことになります。
それまでは服屋さんというのは商品を売ったり買ったりというシステム的なところしか見ていなかったのですが、こんなに会話してファッションを通して人が繋がっていく感じや輪を広げていってくれる事に感動しました。
その時から漠然と「あ、こういうことがしたいんだ(ファッションを通して人と人が繋がる事)」と思うようになりました。

楽しさに逃げた自分

前田:そんな日々を送っている僕は専門学校を辞めてしまいます。
当時、母の闘病もあり地元に帰って一年間休学をしました、その後出席日数が足りなくなり中退を選ぶことになります。
今思えば学校外の人達との繋がりとか、何か「答え」のようなものが学校外にあると勘違いをしていたと思います。また僕自身「楽しさ」に逃げていたのだと思います。
そのような状況でもファッションに関する仕事がしたいという思いから地元に帰ら図、福岡に留まることにしました。
その時に紹介でSPINNSにアルバイトで面接を受けに行き入社することになります。

前田:僕はもともとSPINNSというお店を知らない人でした。SPINNSは宮崎の地元にもなかったですし福岡に出てきても僕が行くお店とその当時はジャンルが全く違いました。
とは言え当時はすぐにでも仕事がしたかったので何の迷いもなくSPINNSで働くことになります。
当時の僕は容姿で人を判断するような人間でした。オシャレかオシャレじゃないかで判断したり、イベントをやってたんですが他のイベントを「あのイベントダサいな」とか「あのグループダサいな」みたいな感じです。本当に良くないですよね。

毎日を全力でやらないと追いつかない状況

ー 容姿で人を判断するタイプだった前田さん。SPINNSに入って何が起こるのでしょう。

前田:面接をしていただいたのが今の上司の方でした。僕は「バイト出来ればいいか」という感覚で面接に行ったのですが、その上司の方に出会って「この人変わってるのかな」というか言葉に出来ない雰囲気を感じていました。全然その人のことがわからない状態の中でも「この人好きだな」と感じていました。
上手く言葉にはできないのですが謎な感じと「嘘をつかない男らしさ」みたいなことを勝手に感じていました。

前田:そしてSPINNSで働くことになります。それまでの僕は学校にもろくすっぽ行かずにゆるく生きていたので、それまでのアルバイトでは遅刻したり適当な感じでしたがSPINNSに入ってからは仕事を毎日全力でやるという体験に変わっていきました。
当時のSUPER SPINNS福岡店は売上も凄かったので、一つ一つの仕事を覚えてステップアップをしていかないと追いつかない状況というのも後押ししてくれました。
お客さんとお話しする暇もないくらい商品を出し続けないと店頭に商品がなくなってしまうくらいです。そんなスピード感は初めての体験でした。
現在のお店はだいぶ変わった部分もあると思いますが、当時のSPINNSは体育会系だったのでどんなことにも全力を出すことを求められる空気が僕にとっては良かったのだと思います。

「こんなカッコいい大人」になりたい

ー 仕事の基礎を学びながら日々過ごしていた前田さんですが事件が起きます。

前田:そんな日々を過ごす中で二日間無断欠勤するという事件を起こしてしまいます。
プライベートで本当に大きな失敗をしてしまって、部屋に閉じこもって外に出れない状況でした。
しかし、上司の対応は「お前もう辞めろ」という感じではありませんでした。
電話が来て「いいから一回来てみな」と言われ会いにいきました。すごく怒られると思って行ったのですが、何が起こったのか経緯をしっかりと聞いてくれて「そっか、迷惑かけたその人たちにお前はどう考えてるの?」とか「自分が正しいことをしたと思ってるかもしれないけどどう考えてるの?」と自分の話を丁寧に聞いてくれて、やってしまったことを整理することや色んな事を教えてくれました。
ただ最後に「もう一回同じことしたら許さないぞ」と叱ってくれましたけど。
「お前もういらないよ」と言われても仕方がない自分に対して、こいつこのままじゃダメだと手を差し伸べ教えてくれるような事は、それまで親以外から感じることはありませんでした。この体験が僕にとっては大きな出来事でした。
一度関わって一緒に仕事をした人たちがいずれ退社して別のところで働くようになったとしても「あの経験があるから今の自分がいる」と言えるような経験をさせて送り出す。そんな人や仕事場に出会ったのは初めてでした。

前田:この出来事をきっかけにその上司のように「人のために全力が出せる人。そんなカッコいい大人になりたい」と思いました。ステップアップする過程で自分が磨かれることでいつかなれると考え店長になるという目標ができました。

機会を逃したら一生やらない、後悔するだろう

前田:数年経って熊本店、大宮店の店長になることができました。
熊本店店長で真剣に部下の成長ということを考えるようになったり、大宮店店長の時はオープンの時お客さんが走って入店されるのを見てお客さんから大きな期待をされていることを実感しました。しかし、その後一度退社することになります。
元々自分のお店がやりたいという夢があったのですが、仲間がちょうど古着屋を出すから一緒にやらないかという話をいただき、辞めるかを凄く迷いました。
しかし頭の片隅にある夢に対してこの機会を逃したら一生やらないと思い、この機会を逃したら今後おそらく後悔すると思いました。それでこの挑戦を最後の機会としてダメだったらアパレル辞める気持ちで退社を選びました。

いちから出直すなら良いよ

ー SPINNSを退社しての日々はどうだったのでしょうか。

前田:二年間そのお店をやったのですが、暗黒の二年でした。楽しかったのですけれど。
お店を出した場所が僕らが居た頃と客層から何から全然違う街になっていて、最初から不安はあったのですが売り上げが伸びず、一緒にやっていたオーナーとの関係もおかしくなっていきました。逆に仲が悪くなるところまでいかなかったんです。今思えば、自分達が感じている言いたいことすら言えてなかった。それが良くなかったのだと思います。
結果的にお店を畳むという事になりました。

前田:その後オーナーが僕の知らない間にSPINNSの元上司に頭を下げに行ってくれました。
店を畳むときにオーナーから今後どうする?と聞かれ「働くのであればヒューマンフォーラムか実家に帰るしか考えていない、でもヒューマンフォーラムは僕の我儘で退社をしたし、会社からすると僕を戻す事にメリットはないので実家に帰る事にする」と話をしていました。
それで僕には内密にオーナーが元上司に会いに行ってくれて「孝行はSPINNSで働いていた時の方がイキイキしてたし、頑張っていたと思うから戻してやってほしい」と伝えてくれたそうです。
その後いろいろな元上司の人たちと食事に行って「いちから出直すなら良いよ、当たり前だけど」と言われ「こんな自分でも戻れる場所があるなら全力で頑張ります」ということで再スタートすることになりました。

期待に応えられなかった自分

ー 再びSPINNSに戻ってきた前田さんの旅はまだまだ平坦ではなかったようです。

前田:それから三年が経ちますが。戻ってからも紆余曲折がありました。
一度バイヤーをさせていただきましたが上手くできませんでした。仕事に関して僕が理解しようとできなかったというのが原因だと思います。上手くできていない事に対して色々と上司の方に聞かれても、僕の思考のスピード的に追いつけなくて何も言えなくなるという状態になってしまいました。結果的に体調を崩すことになります。
僕としては情けなかったです。折角戻らせてもらったにも関わらず、期待に応えられなかった。考えた挙句、会社を辞めるしかないと感じて辞めさせてくださいとお伝えしました。
その後色々な場所への異動の提案を貰い、上司の方から「今辞めたら先が見えないぞ」と真剣に話す機会を頂きました。本当に親身に自分のことを考えてくれている気持ちがありがたくて、甘える形になると思いますがそのまま働くことに決めて現在に至ります。

前田:今はAMS SHOPという店舗にメインで入っています。
暗黒の二年間を経験が今とても活きています。お店の作り方もそうですが、お客さんとのつながり方など当時ネガティブな経験だった「こうしておけば良かった」ということを今に活かせています。
今までの自分を振り返ると選択肢を与えられた時に楽な方ばかりを選んでやってきたのだと思います。今再びチャンスをいただいて、こんな僕でもこんな事ができるようになるというのをスタッフ達には見せていきたいですしその姿勢を大切にしていきたいと思います。

「なんだってできる」やれば失敗も成功だって出来るのだから

ー 前田さんにとっての「ムテキ」とはどんなことでしょう。

前田:「ムテキ」な状態って「なんだってできるよ」って感じかなと思います。
僕はこれまで「やってこなくて挫折したこと」ばかりでした。
でも少ないかもしれませんがやってきたこともあります。変わろうとしない、動かないという事には後悔がありますが、何かをやった後は成功・失敗どっちに転んでも良かったなと感じています。
だから今はやろうと思える。「なんだってできる」のですから。

プロフィール 
前田孝行
SUPER SPINNS 福岡PARCO店 店長サブ 
AMS SHOP 店長 
宮崎県都城市出身 
21歳で株式会社ヒューマンフォーラム(SUPER SPINNS福岡店)に入社。 
2店舗の店長を経験。20代半ばに仲間と古着屋を開業。 28歳で再度SUPER SPINNS福岡店に入社し今に至る。
 現在は2店舗を行ったり来たり。 SPINNSのコンセプト【変われるってムテキ】を通して自分も変化中。
インタビュアー 大槻彦吾 (g5designs & Co.)